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生きがいって何ですか?

  • 執筆者の写真: Hidamari Dr
    Hidamari Dr
  • 2023年7月30日
  • 読了時間: 3分

患者さんの家を訪問した理学療法士が、こう聞かれたそうだ。

「生きがいって何ですか?

人生は何のためにあるのでしょうか。」


患者さんは70歳。

大腸がんの術後で、人工肛門がある。

1LDKのアパートに独居で生活保護。

以前の生活や家族のことは、話したがらない。


そんな人生の先輩からの質問に、理学療法士は答えられなかった。


いま、充実して生きているなら、考えたこともない。

自分のなかに答えがなければ、答えられない。

または、忙しく日々を過ごして、そんなことを考えている時間がない。

難しい問いなので、考えても分からない。


生きがいを辞書で引いてみると、

「生きるはりあい。 生きていてよかったと思えるようなこと」

と定義されている。

つまり、人にとって「生きる価値や意味」を与えるものであると捉えることができる。


生きがいとは、日本語にしかないことばのようである。

英語では、生きがいを表す単語がない。

英語で表現しようとすると、

reason to live (生きる意味)

purpose in life (人生の目的)

となるようだ。

英単語がないため、「ikigai」が英語でも通じるようになっているそうだ。


ikigaiの概念図 ー wikipediaより

生きがいを感じるときとはどんなときなのか。

内閣府が行った60歳以上を対象とした意識調査では、以下のような結果だった。

男性 1位 仕事に打ち込んでいるとき

   2位 孫など家族との団らん

   3位 趣味やスポーツに熱中しているとき


女性 1位 孫など家族との団らん

   2位 知人や友人と食事、雑談をしているとき

   3位 趣味やスポーツに熱中しているとき

   

この結果から、日本人が生きがいを感じる行動が分かる。

しかし、これらの行動=生きがい ではないと思う。

生きがいを感じる行動ではあるが、生きがいそのものとはちょっと違うと感じる。


精神科医の神谷美恵子によれば、生きがいという言葉の使い方には、2通りある。

一つ目は、生きがいの源泉、または対象となるものを指すときである。

(例:この子は私の生きがいですという場合)

二つ目は、生きがいを感じている精神状態(=生きがい感)を意味するときである。

この神谷の説では、外側の対象(他者)や自分の行為と、内側の対象(精神状態)の両方が生きがいとなる可能性がある。

内閣府の調査では、外側の対象や行為が回答の上位を占めている。



しかし、である。

ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。

方丈記にあるように、この世に永遠に変化しないものや人は存在しない。

外側に生きがいを求めても、いつかはそれを失ってしまう。

それが、生きがいと言えるのだろうか。


あまり注目されないが、内側の対象にこそ生きがいがあるのではないだろうか。

内側の対象の生きがいとは?

それは、こころの平安である。

こころの平安を目指すこと、これが生きがいではないだろうか。


いろいろと考えてみると、このような結論に達するが、みなさんはどう感じるだろうか。

 
 
 

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