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執筆者の写真Hidamari Dr

カナブン

月曜の夜、カナブンが部屋に入ってきた。

ぶんぶんと明かりにぶつかっている。

外に出られないようだ。

捕まえて、2階の窓から逃がしてやった。


火曜日。

ベランダに出ると逃がしたはずのカナブンがそこにいた。

ぶんぶんと飛ばずに、床をちょこちょこと歩いていた。


水曜日の朝、何気なくベランダに出た。

庭の景色を見ていると、ジーンズをカナブンが登ってきた。

しばらく見ていると、太もものところで止まった。

逃げる様子はない。

優しくなでてあげると、首をひねってなんだか嬉しそうだった。


水曜日の昼。

今日も暑い。

カナブンがぐったりしている。

はちみつを水で溶いて、小さな容器に入れた。

目の前に置くと、ゆっくりと寄ってきた。

手を使いながら、少しずつはちみつを飲んでいた。

あまり飲めなかった。


木曜日。

朝、ベランダに出ると、カナブンが動かなくなっていた。

仰向けになったその体を、僕はただ見つめていた。


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